ゴルフにはさまざまなマナーがあるが、その中でも特に重要視されているのが「プレーファスト」である。プレーファストとは、ゴルフのプレーを必要以上に遅くせず、適切なペースで進行するという考え方のことだ。
ラウンド中にスロープレー(遅いプレー)をしてしまうと、後ろの組に迷惑がかかるだけでなく、ゴルフ場全体の進行に影響が出てしまう。この記事では、プレーファストの基本的な考え方から、初心者でもすぐに実践できる具体的なコツを紹介していく。

プレーファストが重要な理由
なぜゴルフではプレーの速さがこれほど重視されるのか。その理由を理解しておくことが、プレーファストを自然に実践するための第一歩である。
1組のスロープレーが全体に波及する
ゴルフ場では、通常6〜10分間隔でスタートの組が出発していく。もし1つの組のプレーが遅れると、後続の組がティーイングエリアで待つことになり、そのまた後ろの組も詰まってしまう。1組の遅れがドミノ倒しのようにゴルフ場全体の進行を遅らせてしまうのだ。
ラウンド時間の目安
18ホール(1ラウンド)のプレー時間の目安は、2組以上の場合でハーフ(9ホール)あたり2時間〜2時間15分以内とされている。つまり、18ホールで4時間〜4時間30分程度が標準的な所要時間だ。
ゴルフ場によっては「2時間15分以内」のハーフラウンドを目安として設定しているところもある。この時間を大幅に超えてしまうと、マーシャル(進行係)から声をかけられることもある。
自分自身のプレーにも悪影響がある
スロープレーは周囲に迷惑をかけるだけでなく、自分自身のスコアにも悪影響を及ぼすことがある。ショットの間に時間をかけすぎると、余計なことを考えてしまい、かえって体が硬くなる。テンポよくプレーした方が、リズムが生まれてスコアも良くなるケースは多い。
ルール上、1打にかけてよい時間は40秒以内が基準とされている。素振りに時間をかけたり、ボールの前で長時間立ち尽くしたりすることは、ルール上も問題になる可能性がある。
スロープレーの主な原因
プレーファストを実践するには、まずスロープレーの原因を知っておくことが大切である。よくある原因を挙げてみよう。
原因1:打つ前の準備が遅い
自分の打順が来てからクラブを選び始め、素振りを何回も繰り返し、ターゲットをじっくり確認してからようやく構える。このパターンがスロープレーの最大の原因である。上手い人は、自分の打順が来る前に準備を終えている。
原因2:ボール探しに時間がかかる
林やラフにボールを打ち込んでしまい、探す時間が長引くケースも多い。ルール上、ボールを探す時間は3分間と定められている。3分以内に見つからなければ紛失球として処理する必要がある。
原因3:カートと離れた場所でのクラブ選択ミス
ボールの位置まで行ってからクラブが合わないことに気づき、カートに取りに戻るパターンも時間のロスになる。事前に2〜3本のクラブを持って移動する習慣をつければ、この問題は解消される。
原因4:グリーン上でのモタモタ
パッティングのラインを延々と読み続ける、他のプレーヤーのパットを見ずにぼんやりしているなど、グリーン上でのロスタイムも蓄積すると大きくなる。

プレーファストを実現する10のコツ
ここからは、初心者でもすぐに実践できるプレーファストの具体的なコツを紹介する。
コツ1:打順が来る前にクラブを決めておく
他のプレーヤーが打っている間に、自分のボールの位置や残り距離を確認し、使用するクラブを決めておこう。自分の番になったらすぐに構えて打てる状態を作っておくことが、プレーファストの基本中の基本である。
コツ2:素振りは多くても2回まで
素振りを何度も繰り返すのはスロープレーの典型である。素振りは1〜2回に留めて、サッと構えて打つのが望ましい。練習場では何回でも素振りをして良いが、コースでは回数を意識しよう。
コツ3:レディーゴルフを取り入れる
「レディーゴルフ」とは、準備ができた人から先に打つという方式である。従来は「遠い人から打つ」のが基本ルールだったが、現在のルールでは安全に配慮した上で、準備ができた人から打つことが推奨されている。同伴者がクラブ選択に迷っている間に、先に打ってしまって問題ない。
コツ4:クラブは2〜3本持って移動する
ボールの位置までカートから離れる場合は、使う可能性のあるクラブを2〜3本持っていく。これでカートに取りに戻る時間をカットできる。ウェッジとパターなど、よく使うクラブの組み合わせを決めておくと良い。
コツ5:暫定球を打つ習慣をつける
ティーショットが林やOB方向に飛んだ場合は、すぐに暫定球(予備のボール)を打っておく。ボールが見つからなかった場合に打ち直しに戻る時間を大幅に節約できる。「もしかしたら見つかるかも」と思っても、念のため暫定球を打っておくのがマナーである。
コツ6:ボール探しは3分が上限
ルール上、ボールを探す時間は3分間と定められている。3分経っても見つからない場合は、すみやかに紛失球として処理しよう。時計やスマートフォンで時間を確認する癖をつけると、ずるずると探し続けてしまうことを防げる。
コツ7:グリーン上のラインは他の人が打っている間に読む
自分の打順が来てからラインを読み始めるのではなく、他のプレーヤーのパットを待っている間にボールの転がり方やラインを確認しておこう。他のプレーヤーのパットからもグリーンの傾斜やスピードのヒントが得られるので、観察の時間にもなる。
コツ8:スコアは次のホールのティーイングエリアで記入する
グリーンを離れてからスコアを記入しよう。グリーン上やグリーンのすぐそばでスコアをつけていると、後続の組がショットを打てずに待つことになる。次のホールのティーイングエリアに移動してから記入するのが正しいマナーである。
コツ9:カートの停車位置を意識する
カートはなるべく次のショット地点やグリーンの出口に近い場所に停める。プレー後にカートまで長い距離を歩く必要がなくなるので、移動時間を短縮できる。
コツ10:前の組との距離を意識する
常に前の組との距離感をチェックしよう。前の組との距離が1ホール以上開いてしまっている場合は、明らかに自分たちのペースが遅いというサインである。前の組の背中が見える程度の距離を保つのが理想的だ。

初心者が特に意識すべきポイント
ゴルフ歴の浅い初心者は、上級者に比べてショットの回数が多いぶん、プレー時間が長くなりがちである。しかし、だからといって焦る必要はない。ショットの腕前よりも「動作の速さ」で十分にカバーできるからだ。
打数が多くなったら「拾い上げ」も選択肢に
ホールによっては、何打打ってもなかなかカップに入らないことがある。スクランブルやカジュアルなラウンドであれば、ダブルパー(パーの2倍の打数)を上限として、それ以上は「拾い上げ」(ピックアップ)して次のホールに進むという選択も有効だ。
もちろん公式の競技では拾い上げはできないが、仲間内のラウンドであれば同伴者の了承を得た上でピックアップすることで、後続組に迷惑をかけることを防げる。
移動は小走りで
プレーファストにおいて意外と効果的なのが、移動時に小走りすることである。フェアウェイやグリーン周りでの移動を軽いジョギング程度のペースにするだけで、1ホールあたり1〜2分の短縮になる。18ホール合計で20〜30分もの差になることもある。
Q&Aコーナー:プレーファストに関するよくある疑問
Q. プレーファストを意識しすぎて、ショットが雑になりませんか?
A. プレーファストは「急いで雑に打つ」ことではない。「準備を素早くする」ことが本質である。ショットに集中する時間は十分に取りつつ、それ以外の動作(移動、クラブ選択、スコア記入など)をテキパキ行うという意識が大切だ。むしろ、テンポよくプレーすることでリズムが生まれ、スコアが良くなるゴルファーも多い。
Q. 同伴者のプレーが遅い場合、どう対処すれば?
A. 直接的に「遅いですよ」と指摘するのは角が立つので、まずは自分がテキパキとプレーする姿を見せることが効果的だ。自然と「自分も早くしないと」という意識が伝わることが多い。それでも改善が見られない場合は、「レディーゴルフで行きましょう」と提案するのもひとつの方法である。
Q. ゴルフ場にプレー時間の決まりはある?
A. 多くのゴルフ場ではハーフ(9ホール)の目安時間を2時間〜2時間15分以内としている。これを大幅に超える場合は、マーシャル(進行係)から注意を受けることもある。常習的にスロープレーを行うゴルファーには、ペナルティを科すゴルフ場もある。
まとめ:プレーファストは「気遣い」のマナー
プレーファストの考え方と具体的な実践方法を紹介してきた。ポイントを整理しておこう。
- プレーファストは「急いで打つ」ではなく「準備を素早くする」こと
- 1組のスロープレーはゴルフ場全体の進行に影響する
- 素振りは2回まで、ボール探しは3分まで、レディーゴルフの活用が基本
- クラブ2〜3本持ちやカート停車位置の工夫で移動時間を短縮
- 前の組との距離を常に意識して、自分たちのペースを確認する
プレーファストは、ゴルフというスポーツにおける「周囲への気遣い」の表れである。技術的に未熟な初心者でも、動作の速さやちょっとした工夫でプレーペースを維持することは十分に可能だ。周囲も自分自身も気持ちよくプレーするために、今日からプレーファストを意識してみよう。

参考リンク:
- JGA ゴルフ規則 – プレーのペースに関する公式ルールを確認できる
- ゴルフダイジェスト – ゴルフマナーに関するコラムが充実している
- GEN-TENゴルフレッスン – コースマナーやプレーの基本を学べるゴルフスクール

